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第 1 章

2時限目 脂質の貯蔵効率は炭水化物の5倍以上

田中博士 著 · ✓ 無料公開
0. 0時限目 最初の授業の前と登場人物紹介 1. 1時限目 植物性ケトン食の意味・食後代謝と空腹代謝 2. 2時限目 脂質の貯蔵効率は炭水化物の5倍以上 3. 3時限目 ケトン体は脳のエネルギー・食べながらする絶食

脂質は炭水化物に比べて5倍以上高い貯蔵効率を持つ

重要ポイント ● 脂質の貯蔵効率は炭水化物の5倍以上

  • 炭水化物 1g の貯蔵に 2〜3g の水が必要
    炭水化物 1g は 4kcal を生み出す
  • 脂質 1g の貯蔵に 0.1g の水が必要
    脂質 1g は 9kcal を生み出す

田中博士 炭水化物は1gあたり何kcalのエネルギーを作るか、ご存じですか?

佐藤恵子 それは高校で習った気がします。1gあたり4kcalですよね。

田中博士 はい、正解です。本を読むとか、友達と話すとか、何かを考えるときに、脳は1分で1.5kcalを使うそうです。だいたい2分40秒くらい友達と話すと、脳が消費する分が4kcalくらいになる計算ですね。それから1分散歩すれば4kcal、激しい運動なら1分で10kcalを使うそうです。おっしゃるとおり、炭水化物は1gで4kcal。ではタンパク質1gと脂質1gはそれぞれどれだけのエネルギーを生み出すか、ご存じですか?

鈴木美咲 それなら。タンパク質は炭水化物と同じです。1gで4kcal。脂質は1gで9kcalです。

田中博士 すばらしい、正解です。タンパク質は窒素原子を含むので、エネルギー源として貯蔵されにくいんです。だから体のエネルギー貯蔵の形は、炭水化物と脂質の2つだと考えるとわかりやすい。同じ質量で見ると、脂質は炭水化物の2.2倍のエネルギーを生みます。でも脂質の貯蔵効率の高さはここで終わりません。なぜなら、炭水化物はグリコーゲンの形で肝臓や筋肉に蓄えられますが、1g貯蔵されるのに3gの水が一緒に蓄えられないといけないんです[5]。一方、脂質1gが貯蔵されるときに必要な水はたった0.1gです。だから4kcalを蓄えようとすると、炭水化物1g+水3g=4g。一方、脂質で9kcal蓄えるなら、脂質1g+水0.1g=1.1gで済む。つまり、炭水化物は実質1gあたり1kcalを蓄えるのに対し、脂質は1gあたり8.1kcalを蓄える計算になります。実際に脂質は炭水化物に比べて5倍から6倍高い貯蔵効率を持つと報告されています[6]。

自然の中で動き、活動するとき、重い荷物を背負っているより、軽くて高エネルギーを生み出せるほうが、生存上有利ですよね。だから私たちの体で使い切れず余った栄養素は、それが炭水化物だろうがタンパク質だろうが、最終的には脂質に変えられて体に蓄えられるんです。

山田佳子 炭水化物やタンパク質が脂質に変わるんですか?

田中博士 はい、そうです。炭水化物を構成する原子は炭素・水素・酸素の3種類です。タンパク質も炭素・水素・酸素の3種類に窒素が一つ加わります。そして脂質を構成する原子は、炭水化物と同じく炭素・水素・酸素の3種類。つまり、レゴの基本ブロックを思い浮かべてください。同じレゴのブロックでも、家も作れるし車も作れますよね。同じ原子である炭素・水素・酸素のブロックを、つなぎ方によって炭水化物にも脂質にもできるんです。タンパク質も窒素原子を取り除けば、それで炭水化物にも脂質にもできます。ただし、体がエネルギー貯蔵庫を作るとしたら、炭水化物やタンパク質よりも脂質の形で作るほうが断然お得なんですよ。

重要ポイント ● 体内で使い切れず余った栄養素は、形が何であれ最終的に貯蔵効率の高い脂質に変わる

  • 炭水化物と脂質を構成する原子は 炭素・水素・酸素
  • タンパク質を構成する原子は 炭素・水素・酸素・窒素
  • 炭水化物・脂質・タンパク質は相互に変換できる

鈴木美咲 わ〜、すごい。私たちの体を構成して、エネルギーとして使われる栄養素たちが、まるでレゴみたいなんですね。私の好きなレゴと同じだとおっしゃると、体とケトンの話がだんだん楽しくなってきました。

田中博士 ははは、授業が楽しいなら何よりです。実は私たちの体について理解することって、本当に楽しいことなんですよ。不思議でもありますしね。

佐藤恵子 先生。でも、ケトン体って何なのか、なぜケトン体が体内で作られないといけないのか、何からケトン体が作られるのかは、まだお話しいただいていないようですが^^

田中博士 あ、そうですね。でも2時限目がもう終わる時間です。10分ほど休憩したあと、3時限目でお話ししますね。今回はとりあえず、脂質が体の主な貯蔵形態だということを理解いただければ十分です。そして脂質が貯蔵される場所は主に皮下・肝臓・血管・腹部の4ヶ所だということを理解しておくとよいですよ。これがわかれば、ケトン体について簡単に理解できると思います。

佐藤恵子 はい、わかりました。だんだん面白くなってきました。次の時間が楽しみです^^