3時限目 7編レビュー論文・GABAと眼窩前頭皮質・神経バランス
「ケトジェニックダイエットと自閉スペクトラム症の治療」
A Ketogenic Diet and the Treatment of Autism Spectrum Disorder
Qinrui Li, Jingjing Liang, Na Fu, Ying Han, Jiong Qin
Department of Pediatrics, Peking University People's Hospital / Peking University First Hospital, Beijing, China
| 研究対象 | 食事 | 期間 | 結果 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 自閉症とてんかんの子ども | グルテンとカゼイン除外、ケトン食 | 14ヶ月 | 認知と社会技術、言語機能改善、てんかん発作なし | J Child Neurol. (2013) 28:975–82 |
| 6歳の子ども | ケトン食 | 16ヶ月 | 行動と知能改善、脳皮質全体でのブドウ糖吸収増加 | Metab Brain Dis. (2018) 33:1187–92 |
| 15人の子ども (2-17歳) | MCTで調整されたケトン食、グルテン除外 | 3ヶ月 | 自閉症状改善、制限と反復点数そのまま | Physiol Behav. (2018) 188:205–11 |
| 45人の子ども (3-8歳) | G1: アトキンソン変形ケトン食 / G2: グルテン・カゼイン除外 / G3: 一般食 | 6ヶ月 | G1とG2でATECとCARS点数改善 | Metab Brain Dis. (2017) 32:1935–41 |
| 6人の自閉症患者 | ケトン食 | — | 1人は劇的な改善(CARS 41→21) それ以外は多少改善 | Front Hum Neurosci. (2013) 7:858 |
| 30人の子ども (4-10歳) | ケトン食 | 6ヶ月 | 18人CARS改善 | J Child Neurol. (2003) 18:113–8 |
| 深刻に発達障害がある男性 | 変形されたアトキンソン食事 | 1年 | 発作中止、自閉症状改善、行動問題消失 | Duodecim. (2010) 126:557–60 |
田中博士 私たちが見ていく3番目の論文は"A Ketogenic Diet and the Treatment of Autism Spectrum Disorder"という論文で、日本語では「ケトジェニックダイエットと自閉スペクトラム症の治療[29]」です。この論文はケトン食と自閉スペクトラム症の関係についてのレビュー論文です。この研究では改善を報告した論文7編を紹介しました(表5-2)。2歳から17歳までの多様な年齢層を対象とした7編の論文は、ケトン食が認知、社会技術、言語能力などが改善されたと報告しています。そして発作が中断され、自閉症状が減少したと言います。研究陣はケトン食が自閉症の改善効果を見せる根拠としてエネルギー代謝の改善、抗炎症、抗酸化効果、神経伝達物質の調節、オートファジーの促進、腸内微生物の調節などを提示しました(図5-15)。ここで神経伝達物質においてGABAという抑制性神経伝達物質が増加すると言いました。
安定的な脳機能には人格を担当する眼窩前頭皮質と抑制性神経伝達物質であるGABAが重要だ
山田佳子 おっしゃったGABAはもしかしたら機能性米に多いというGABAと同じものでしょうか? GABAがたくさん入った製品は価格も高いです。それだけの効果があるのですね。それならGABAがどの点で良いのか知ることができるでしょうか?
田中博士 はい、その通りです。最近機能性食品で多く広告されているGABAがこの研究で言うGABAと同一の単語です。GABAは神経伝達物質の一つです。人体の神経系は大きく興奮性のグルタミン酸と抑制性のGABAがバランスを取って神経系を調節します。例えるなら、GABAは自動車のブレーキの役割をして、グルタミン酸はアクセルペダルの役割をします。健康な身体と精神作用のためには2つとも重要で、適切にバランスを合わせることが必要です。GABA神経が特に密集している部分が眼窩前頭皮質という部分で人格脳部位としても知られています(図5-16)。先にGABAは自動車のブレーキのような役割をすると申し上げました。それなのに、GABAの量が少なかったり機能を適切に果たせなかったりするとどうなるでしょうか?
佐藤恵子 ブレーキのない自動車ならむやみに疾走して衝突したり、多様な交通事故を起こしたりするでしょう。ところが人がそうなるという意味でしょうか?
田中博士 そうです。GABA神経が密集した眼窩前頭皮質が損傷すると、例えば事故による外傷や疾病によって前額部分が損傷した事例について科学的研究が報告しています。ゲージ研究が広く知られた事例ですが、アメリカ開拓時代に鉄道を敷いていたゲージという人物についての話です[30]。ダイナマイトが誤って爆発して鉄パイプが前額部分を貫通してしまったそうです。その後彼は嘘とののしりを簡単にし、約束をよく守らず、道徳性が低くなるなどの行動パターンを見せます。結局職場から追い出され、離婚することになったそうです。ところがGABAの減少とグルタミン酸の増加は神経系を過度に興奮させることによって、正常な神経機能を損傷させ、てんかん発作や統合失調症などを含む多様な精神疾患を誘発させることがあります。
鈴木美咲 あ、はい、それは私も知っています。ケトン食についての研究は1920年代に子どもの間質治療のための方法を知る過程で発見されたそうです。
田中博士 そうです。当時にケトン食の間質改善、つまりてんかん改善についての効果が発見されて研究が進められたのですが、その後薬物が開発されケトン食がしばらく忘れられました[31,32]。しかし薬物で改善されないてんかん症状ではケトン食が引き続き利用されていました。実際に韓国を含めた世界各国の大学病院のホームページに子どもの間質、つまりてんかんを改善する方法としてケトン食を案内しています。
鈴木美咲 多様な精神疾患でGABA生成が重要な理由が気になります。GABAが抑制性と言うのですが、どのように神経細胞の信号を調節するのですか?
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