2時限目 細胞のオートファジー清掃とメタボリック症候群
細胞内のゴミを掃除すれば細胞は若返り、健康になる
小林春子 博士、それでは細胞内のゴミを掃除すれば細胞が再び若返ることができるのですか?
田中博士 そうです。ところで、私たちの体で水の比率はどれくらいかご存知ですか?
小林春子 おおよそ70パーセントほどと知っています。
田中博士 はい。その通りです。ところが子供の場合はもう少し多くて、全体体重の80パーセントが水だと言われています。成人になると70パーセント、そして老人になるとおおよそ60パーセントに水の比率が減ります。だから老化は水が抜けていく現象だと表現する科学者もいます。
小林春子 老化が進行すると水が減る理由は何でしょうか?
田中博士 それは細胞内部にゴミが徐々に増加するためと推定できます。水があるべき空間にゴミが蓄積しながら水が徐々に減ることになるのです。
小林春子 それでは細胞内のゴミを掃除すれば細胞内の水の量が増加することができ、再び若返ることができるという意味ですか? もしそうなれば本当に良いですね。
田中博士 そうです。だから人を対象とした研究によると、断食をしながら体の水分量が10パーセント増加するという研究報告があります。実験用に多く使われるサナダムシ、ショウジョウバエ、マウスの場合、カロリーを制限して寿命が20から50%まで増加したものとして出ています。人の場合、沖縄の住民が栄養推奨量の62%程度で少食をするのですが、脳血管疾患、癌、心臓疾患による死亡が一般人に比べてそれぞれ59%、69%、59%と出ています。
小林春子 カロリーを制限すると寿命が延長される理由は何でしょうか?
田中博士 良い質問です。科学者たちは様々な原因を挙げています。何より活性酸素が減少するということです。過度に大きくなった脂肪細胞は活性酸素と共にアディポカインという毒素を作ります。したがってカロリーを制限すると脂肪細胞のサイズが減少しながら酸化ストレスと炎症が減少します。脂肪細胞と体脂肪が減少しながら栄養素に対する細胞の感受性が増加して代謝効率が円滑になりますね。すると心血管疾患も減少することになり、遺伝子損傷も少なくなるので癌や1型糖尿病も減少しますね。そして深部の温度減少も寿命延長の効果を示すと言われています。代謝が速くなるとそれだけ体温が上がって寿命が短縮されるということです。実際に肉食をする一般人に比べてベジタリアンの体温が0.5度ほど低いと報告されています。
飢えれば細胞が自ら掃除する
小林春子 それでは断食をする時に水分量の比率が増加するというのは、断食をすれば細胞内のゴミが掃除されるという意味ですか? そして各種疾病が改善されると見ることができるでしょうか?
田中博士 そうです。図3-5のように、肉類、白い小麦粉、白米、砂糖、炭水化物の過剰摂取は熱量過剰摂取につながって、結局腹部肥満、脂肪肝、動脈硬化に進行します。血管に脂質があふれて高脂血症となり、脂質はブドウ糖とエネルギーとして利用されようと酸化競争をします。この過程で消費されないブドウ糖が増加して糖尿病に進行することになります。糖尿病により微小血管に血液循環が遅くなりながら視神経と四肢末端に壊死が進行します。酸素がよく通らないと炎症、癌、認知症などが速く進行しますね。したがって最初の原因を解決すれば続く過程を根本的に遮断するのであり、これが自然治癒の核心原理の一つと言えます。つまり世界中の全ての自然治癒の根底にはカロリー制限があります。
📊 図3-5. 栄養過剰摂取がメタボリックシンドロームを発生させる過程
肉類·白い小麦粉·白米·砂糖·炭水化物 → 熱量過剰摂取·中性脂肪増加 → 腹部肥満·脂肪肝·動脈硬化 → 遊離脂肪酸放出·高脂血症 → 炭水化物と脂質の酸化競合 → 高インスリン血症·インスリン抵抗性 → 高血圧·腎損傷·組織壊死 → 炎症·癌·うつ病·認知症·ミトコンドリア機能異常 → 心血管疾患·メタボリックシンドローム
体重減量はメタボリックシンドローム治癒の核心要素であり、最初に行われなければならない。植物性ケトン食は空腹感なしに必要な栄養を供給しながら体重減量を助ける。
※ ここに図3-5を挿入予定(メタボリックシンドロームのフロー図)
田中博士 はい。そうです。そのように解釈することもできます。断食をすると細胞内部のゴミが掃除されます。これを専門用語でオートファジー(autophagy)と言います。ここで auto は自ら(self)、phagy は食べる(to eat)という意味を持っており、漢字では「自食作用」と言います。これは2016年度のノーベル生理医学賞のテーマでもあります。
鈴木美咲 わぁ〜、断食をすると細胞内のゴミが掃除されるという内容がノーベル賞を受賞したのですね。ではオートファジー研究も多くあるのですか?
田中博士 はい。そうです。図3-6のように2000年を起点に急激に増加するのが見られます。そして2016年には大隅教授がオートファジー研究でノーベル生理医学賞を受賞することになります。
📊 図3-6. オートファジー関連研究の推移
2000年代に入りオートファジー研究が急速に増加した。
主要マイルストーン:オートファジー関連初の国際学会 → 酵母オートファジー遺伝子ATG1発見 → 哺乳類オートファジー遺伝子発見 → オートファジー専門誌創刊 → 2016年 大隅良典教授ノーベル生理学・医学賞受賞
1965年から2010年まで論文発表数は数本から700本以上へ急増。
※ ここに図3-6を挿入予定(年代別オートファジー論文発表数グラフ)
重要ポイント ● カロリー制限と寿命延長
- 断食で体内水分量が10%増加(細胞内ゴミ掃除の指標)
- 動物実験ではカロリー制限で寿命20-50%延長
- 沖縄住民は栄養推奨量の62%摂取で、脳血管·癌·心臓死亡率が59-69%
- ベジタリアンは肉食者より体温が0.5度低く寿命延長効果がある
- 2016年 大隅良典教授がオートファジー研究でノーベル賞受賞