1時限目 ミトコンドリア活性酸素・ATP/ADPと細胞内のゴミ
ミトコンドリアの活性酸素が細胞内分子を凝集させる
田中博士 良い質問です。まず最も重要な原因の一つは活性酸素のためです。私たちの体でエネルギーを生成するためには何が必要でしょうか?
佐藤恵子 栄養素が必要ですね。
田中博士 栄養素は一種の燃料ですね。私たちが例えば薪に熱を出す時どうしますか?
小林春子 木に火をつけてから、扇のようなもので軽くあおいでやりますね。
田中博士 そうです。扇であおぐ理由は酸素を供給するためです。木がよく燃えるために酸素が必要なように、私たちの体でもエネルギーを生成するためには食べ物の栄養素と共に酸素が必要です。皆さん息ができないと苦しいですよね? その理由は酸素を供給できないからです。
鈴木美咲 はい。ラヴォアジエというフランスの科学者が燃焼実験を通じて酸素を明らかにしたと聞きました。ロウソクを小さな瓶の中に入れると最初は蝋燭が燃えますが、時間が経つにつれて瓶の中の酸素が全て使われるとロウソクが消える実験をしましたね。
田中博士 はい。その通りです。私たちが呼吸をすると肺を通じて酸素が供給されます。そうすると肺の中にある小さな袋が100万個になりますが、これを肺胞といいます。肺胞の薄い細胞膜を通じて毛細血管の赤血球に酸素が伝達されます。赤血球が酸素を受け取って人体全般の細胞に酸素を供給します。すると赤血球から細胞が酸素を受け取り、ミトコンドリアという細胞内にある細胞小器官に酸素を伝達します。ミトコンドリアが酸素を利用してエネルギーを生成し、ATPという分子の形でエネルギーを貯蔵します。もう少し詳しく説明すると、細胞の栄養素を利用したエネルギー代謝は解糖系、TCAサイクル、電子伝達系という3段階の過程を経ます。解糖系は酸素なしで細胞質で起こり、残りの2段階は酸素を利用してミトコンドリアで生化学反応が起こります。
📊 図3-2. 細胞内エネルギー生産の3段階
人体細胞内でのエネルギー生産は解糖系、TCAサイクル、電子伝達系の3段階過程を経る。
① 解糖系:細胞質で、酸素なしに2 ATP を生成
② TCAサイクル:ミトコンドリア内、2 ATP を生成
③ 電子伝達系:ミトコンドリア内、酸素利用で 32 ATP を生成
合計:約 36 ATP(癌細胞は85%を乳酸生成に利用 - ワールブルク効果)
※ ここに図3-2を挿入予定(解糖系→TCA回路→電子伝達系の図)
山田佳子 ミトコンドリアが酸素を利用してATPというエネルギーを作るというのは分かりました。ところでそれが細胞内にゴミを作ることと何の関係があるのですか?
田中博士 良い質問です。ミトコンドリアが酸素を利用してATPエネルギーを作る際、酸素2万個のうち1個は活性酸素を作ることになります。活性酸素の「活性」という意味は「活発である」、つまり「化学反応をよく起こす」という意味です。だから活性酸素ができると周辺に遺伝子があれば遺伝子と化学反応をして遺伝子の構造を変形させて機能できなくします。そして活性酸素の周囲にタンパク質があればタンパク質と反応をしてタンパク質の構造を変えて機能できなくします。ATPはADPとリン酸(Pi)に分離されながらエネルギーを生成し、再び栄養素を利用してADPとリン酸が結合する過程を一日に1,000回繰り返します。ATPは人体に40g程度あるので、1,000回なら40kgになる計算ですね。
📊 図3-3. ATPの消費と生成過程
ATP(リン酸×3)はADP(リン酸×2)とPi(リン酸)に分離されながらエネルギーを生成する。
1モルあたり 7.3 kcal のエネルギーが視覚·聴覚·運動·消化·免疫などに利用される。
人体には40g程度のATPが存在し、1日約1000回 ATP↔ADP+Pi を循環。
1日40kgのATPを使用する計算となる。
※ ここに図3-3を挿入予定(ATP↔ADP+Pi 循環図)
活性酸素は抗酸化栄養素・抗酸化酵素が防御する
山田佳子 活性酸素が化学反応をよく行う理由は何ですか?
田中博士 ああはい。それは簡単に申し上げると、電子は対をなすと安定するのですが、活性酸素は対をなさない酸素だと考えてください。偶数は2、4、6、8というふうに、奇数は1、3、5というふうですよね。電子はマイナス電荷を持っていますが、同時に自転をします。だから磁場を作ります。一つの電子が回るとN極とS極ができますが、こうなると不安定になります。だから隣に他の電子が対をなしてその電子の反対方向に自転しながらN極とS極を作って磁性を相殺させると安定するのです。
小林春子 酸素2万個のうち活性酸素が1個出るなら、非常に多くの活性酸素が出るということですね。
田中博士 はい。そうです。だから私たちの体には抗酸化酵素を作ります。そして多様な植物には抗酸化成分があって、私たちの体の活性酸素で危険になることを防いでくれます。ビタミンの中でもビタミンCやビタミンE、ビタミンAなどが抗酸化役割をします。だからこれら抗酸化役割をするビタミンをよく摂取すると脳の発達にも多くの助けになります。
鈴木美咲 つまり活性酸素ができてタンパク質と反応するとタンパク質が凝集して機能できなくなるのですね。そして脂質と反応すると脂質が凝集し、遺伝子と反応すると遺伝子が故障して放置するのですね。それがまさに細胞内のゴミという話ですね。
田中博士 そうです。細胞は非常に小さいと考えがちですが、微生物に比べると1,000倍以上の大きな体積を持っています。平均的に1個の細胞には200個から300個のミトコンドリアがあると言われています。ミトコンドリアは細胞の発電所というあだ名を持っています。肝細胞の場合は仕事を多くするので、肝細胞一つあたり1,700個から2,200個のミトコンドリアがあります[12]。だから数個や数十個のミトコンドリアが故障しても、細胞は故障した状態で放置します。これが徐々に蓄積しながら活性酸素が多く生じ、ATP生成が減って疾病や老化が進行するのです。
📊 図3-4. ATPと活性酸素のバランスと健康
ATPは増加し活性酸素が減少すれば健康である。一方ATPは減少し活性酸素が増加すれば人体は疾病と死に至る。
3段階:適応反応 → 調節された細胞死開始(疾病·炎症)→ 調節された細胞死進行(回復不能領域、死亡へ至る)
※ ここに図3-4を挿入予定(ATPと活性酸素の経時変化グラフ)
重要ポイント ● 活性酸素と細胞の老化
- ミトコンドリアでATP生成時、酸素2万個に1個が活性酸素になる
- 活性酸素はタンパク質·脂質·遺伝子と反応し凝集を起こす
- 1個の細胞に200〜300個(肝細胞は1,700〜2,200個)のミトコンドリアがある
- 抗酸化ビタミン(C·E·A)と植物の抗酸化成分が活性酸素を中和する