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第 11 章

3時限⽬ ケトン⻝の精神疾患改善 — 6つの研究

田中博士 著 · 🔒 50%無料公開 (続きはプレミアム会員)
0. 0時限⽬ うつ病とケトン⻝ — 脳のエネルギー消費 1. 1時限⽬ 代謝的神経疾患モデル — パーマー博⼠の理論 2. 2時限⽬ ミトコンドリア・コルチゾール・ストレス 3. 3時限⽬ ケトン⻝の精神疾患改善 — 6つの研究
研究①

「⼈体疾病に対するケトン⻝:基本メカニズムおよび臨床応⽤の可能性」

⽥中博⼠ まずは最近どれほど多くの研究が進められているかを⾒てみましょう。⼀つ⽬は「Ketogenic diet for human diseases: the underlying mechanisms and potential for clinical implementations」という研究をご紹介します。⽇本語では「⼈体疾病に対するケトン⻝:基本メカニズムおよび臨床応⽤の可能性[62]」という論⽂で整理された内容によれば、2000年までケトン⻝に関する研究は50編にも満たないものでした。しかし、2010年には100編を超え、2020年には毎年600編余りの研究が報告されています。

この論⽂ではケトン⻝が様々な効果を通じて様々な疾病を改善すると説明しています。抗炎症、抗酸化、⾎流改善、遺伝⼦調節改善、オートファジー、⻝欲減少、満腹感の増加、腸内微⽣物改善、⾎糖減少、インスリン減少、アミロイド分解などは⼈体全般の細胞と組織の健康を助けます。これにはエネルギーと酸素を多く使い、ミトコンドリアが多く利⽤される脳細胞も含まれます。それだけでなく、抑制性神経伝達物質であるGABAを増加させ、反対に興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の値を下げることも、精神機能改善に役⽴つと説明しています。

鈴⽊美咲 ⽥中先⽣がおっしゃったように、様々な経路を通じて精神疾患の改善が⾏われるんですね。それなら⼈体への負担も少なく副作⽤も少なく、改善が様々な経路で進⾏するので、より早くより効果的に改善されそうです。

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図11-2. ケトン⻝研究論⽂数は2010年を起点に爆発的に急増している
PubMedで検索されたケトン⻝関連の研究論⽂数(1931-2020)。2020年単年だけで580件を超える棒グラフ
📌 棒グラフ挿⼊位置 — Y軸: 0-600編、X軸: 1931-2020年
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図11-3. ケトン⻝の様々な経路を通じた疾病改善メカニズム
摂取タンパク質増加・ケトン体増加・摂取炭⽔化物減少・繊維芽細胞成⻑因⼦21増加・⾎糖移動・インスリン抵抗性減少 → 第2型糖尿改善・肥満改善・⾮アルコール性脂肪肝改善・多嚢胞性卵巣症候群改善のフローチャート
📌 フローチャート挿⼊位置
研究②

「ケトン⻝と⾏動 実験研究からの洞察」

⽥中博⼠ 続いて「Ketogenic diet and behavior: insights from experimental studies」という⼆つ⽬の研究を紹介します。⽇本語では「ケトン⻝と⾏動 実験研究からの洞察[63]」ですね。この研究はケトン⻝の認知、うつ、不安、社会的⾏動についての研究90編をまとめました。

この研究によれば、90編中わずか7編だけがケトン⻝の否定的結果を報告しました。そしてケトン⻝が様々な精神疾患に効果がないというものは31編で、肯定的効果があったというものは46編でした。実験の設計によって統計的有意度がない場合があるという点を考慮しなければなりません。例えば男性と⼥性を⼀緒に含めて分析すると統計的有意度が低いですが、分離して統計を分析すれば有意に出ることがあります。

研究③

「双極性障害におけるケトン⻝のパイロット研究 臨床、代謝体および磁気共鳴分光法の結果」

⽥中博⼠ 次にご紹介する三つ⽬の論⽂は「A pilot study of a ketogenic diet in bipolar disorder: clinical, metabolic and magnetic resonance spectroscopy findings」という研究です。⽇本語では「双極性障害におけるケトン⻝のパイロット研究 臨床、代謝体および磁気共鳴分光法の結果[64]」です。この研究は27名を対象に6週間から8週間ケトン⻝を⾏った結果を報告しています。

図11-4で⾒るようにケトン体が増加するほど気分(a)、エネルギー(d)、衝動性(b)、不安(c)が改善されていました。それだけでなく、体重が4.2キログラム、体格指数BMIが5.3パーセント減少しました。収縮期⾎圧は7.4mmHg減少し、発作防⽌に関連した指標も13.1パーセントから9.2パーセントに減少しました。

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図11-4. ケトン値の増加に伴う気分・エネルギーの増加、衝動性・不安の減少
4つの散布図 — (a)気分↑ (b)衝動性↓ (c)不安↓ (d)エネルギー↑、X軸: ケトン(mM) 0-5、Y軸: 0-80スコア
📌 4分割散布図挿⼊位置
研究④

「ケトン⻝は⼀般⼈の精神的・情緒的ウェルビーイングと正(+)の関連性がある」

⽥中博⼠ 四つ⽬の研究は「ケトン⻝は⼀般⼈の精神的・情緒的ウェルビーイングと肯定的な関連性がある[65]」という研究です。そしてこの研究はそれぞれ147名と276名を対象に2つのオンラインサーベイ調査を⾏ったものです。

ソーシャルメディアを通じて18歳以上、精神疾患のない⼀般⼈を対象に募集しました。そして⻝品頻度調査表と24時間想起法で参加者の⻝事を分析しました。もしケトン⻝を⾏っているならば、期間を表⽰してもらい、1週間以上ケトン⻝を⾏うグループを分析に含めました(図11-5)。分析結果は次のとおりでした。ボンド・ラダー視覚アナログ気分尺度は、主観的な特性や態度を測定します。16項⽬で構成され、警戒度、幸福感、集中⼒、満⾜感などが含まれます。

分析結果、図11-6(a)で⾒るように警戒度はケトン⻝グループが平均73点であるのに対し、⼀般⻝グループは61点でケトン⻝グループが12点⾼くなりました。図(b)で満⾜感はケトン⻝グループが74点なのに対し、⼀般⻝グループは61点でケトン⻝グループが13点⾼かったです。図(c)で沈着さはケトン⻝グループが72点なのに対し、⼀般⻝グループは63点でケトン⻝グループが9点⾼かったです。続いてPSS-10というストレス指標では、図11-7(c)ケトン⻝グループが11.9なのに対し、⼀般⻝グループは16.2でケトン⻝グループが低かったです。図(a)でうつ病はケトン⻝グループが5.87なのに対し、⼀般⻝グループは10.01で⾼かったです。ストレスはケトン⻝グループが8.44なのに対し、⼀般⻝グループは11.97でした。孤独感指数はケトン⻝グループが4.63なのに対し、⼀般⻝グループは5.11でした。ケトン⻝を⾏った期間が⻑いほど警戒度と満⾜感が増加しました。そしてケトン⻝を⾏った期間が⻑いほどストレス指数が低くなりました。表11-2のように結論をまとめると、ケトン⻝グループは警戒度、満⾜感、沈着さは⾼かったです。⼀⽅で認知的ストレスと情緒的ストレス、うつ、不安、孤独感は低かったです。

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図11-5. ケトン⻝設問研究2つの実験過程
コホート1(361名)→ PSS-10(260名)→ ケトン⻝173名・気分147名・普通⻝87名 / コホート2(399名)→ DASS(276名)→ ケトン⻝122名・普通⻝154名のフローチャート
📌 研究フロー図挿⼊位置
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図11-6. ケトン⻝と⼀般⻝の警戒度・満⾜感・沈着さの⽐較
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