2時限目 ケトン体が食欲ホルモンと脳に与える影響
「ケトン食ダイエットが肥満および他の代謝障害に及ぼす影響:非系統的レビュー」
田中博士 次に取り上げる論文の題名は「ケトン食ダイエットが肥満および他の代謝障害に及ぼす影響:非系統的レビュー[43]」です。ここで著者らは、ケトン体が脳に多様なホルモンシグナルを送ることで自然に食欲を低下させ、むしろ満腹感を生み出すと説明しています。さらに抗酸化、抗炎症作用と、ケトン体自体が遺伝子の調節に影響を与えるとしています。
佐藤恵子 食欲に関連するホルモンについて、もう少し教えていただけますか。
田中博士 まず神経系は求心性と遠心性の2種類のシグナルに分けられます。末梢から中枢神経系へシグナルが伝達されるものを求心性シグナルといいます。逆に中枢神経系から末梢へシグナルが伝達されるものを遠心性シグナルといいます。つまり、末梢からの様々なシグナルが中枢に伝達され、中枢ではそれらのシグナルを統合・整理した後、最終決定を末梢に送り返します。このフィードバックが円滑に進むことで、人体は統制のとれた個体としての特性を示せるのです。
田中博士 ところが、脂肪細胞、胃、膵臓、回腸、結腸から多様なホルモンが放出され、中枢神経系である脳の視床下部弓状核(arcuate nucleus)**で統合処理されますが、これは求心性シグナルを作るといえます。続いて視床下部弓状核の神経が信号を統合した後、再び遠心性シグナルを生成して末梢へ送り出します。遠心性シグナルの2つの中核的代謝は、栄養素の合成と分解といえます。すなわち食事を摂取すること、エネルギーを消費することです。弓状核において「POMC/CARTニューロン」は食欲を低下させて体重を減少させ、一方「NPY/AgRPニューロン」は食事摂取を促進して体重を増加させます。
鈴木美咲 ではケトン食は食欲を抑制するホルモンを放出させ、食欲を抑える「POMC/CARTニューロン」を活性化するということですか?
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