3時限目 ケトン食で第1型糖尿病を管理する
「ケトジェニックダイエットで第1型糖尿病を管理する」
田中博士 続いて二番目に見る論文は『ケトジェニックダイエットで第1型糖尿病を管理する[40]』です。この研究ではまず、20代に第1型糖尿病の診断を受けたドイツ人男性の事例を提示します。体重は61キログラム、身長は175センチメートルです。お酒もタバコも全くしません。この男性は毎日140グラム程度の炭水化物を摂取していました。おおむね朝に23グラム、昼に55グラム、おやつに12グラム、夕食に50グラムの炭水化物を摂取しました。ところが突然、血糖調節ができなくなり、インスリンの投与を受けなければならなくなったのです。
小林春子 おそらく第1型糖尿病の症状のようですね。膵臓が損傷されてインスリン自体が作られなくなったようです。
田中博士 はい、その通りです。毒素によるものなど多様な原因があるでしょうが、膵臓が突然損傷を受けたようです。ところが病院では1年にわたってこの男性を対象に、炭水化物を140グラムから25グラムへと摂取量を毎日少しずつ減らしていくようにしました。代わりにタンパク質と脂質の摂取量を徐々に増やしていきました。このような食事は、一般的なケトン食と同様に動物性食品を利用したものです。新鮮な野菜、肉類、卵、チーズ、バター、魚などを含んでいました。もちろん、すでにお伝えしたように、脂質の比率を高めて炭水化物の摂取を減らすケトン食の食事構成は、動物性に比べてナッツ類、種実類、豆類で代替したときに、より良い結果を得られると考えています。
ケトン食を行った結果は驚くべきものでした。図7-3(d)に示すように、HbA1cは2018年12月に55ミリモル、7.2パーセントだったのが、2019年9月には32ミリモル、5.1パーセントへと正常水準に戻りました。この間に体重の変化はなく、身体的活力も変化がありませんでした。この患者に必要なインスリンも変化しましたが、以前は毎日インスリン デグルデック(Degludec)が30IU*(国際単位)使用されていましたが、ケトン食を行った後は4.5から5.5IUのみ必要になりました(図7-3(b))。血中ケトン体は0.2から2ミリモルへ増加しました(図(a))。
すなわち、人体はエネルギー源としてのブドウ糖の利用を一部ケトン体に変えたのです。研究によれば、健康なレベルでケトン体は10ミリモル以下だそうです。他の映像で紹介しますが、通常断食をすると5日が経たないうちにケトン値は5ミリモルになり、その後7ミリモルで上下します。こうなると人体で本格的なオートファジー、細胞清掃作用が行われると見ることができます。
(b) 1日インスリン投与量(IU): 30 → 4.5~5.5 (基礎+食事+総)
(c) 1日炭水化物摂取量(g): 140 → 25
(d) 血漿HbA1c(%): 7.2(55mmol) → 5.1(32mmol)
期間:2018年12月~2019年9月
*IUは「International Unit」の略で、国際単位という意味です。主に薬理学でビタミン、ホルモン、薬物、ワクチンなどの効力を示す単位として使用されます。すなわち、絶対的な量ではなく、物質の生物学的活性度、効力を示す基準として使用されます。物質種類によって異なるため混同が生じます。2016年5月、米国のFDAはIUよりmcgとmgを使用することを推奨し、2019-2020年にはmcgとmgのみを使用するか、併用表記することを義務化しているため、IU表記は今後ますます減ると見込まれます。
佐藤恵子 HbA1cは3ヶ月間の平均的な血液の糖値を知らせると聞いたんですが、10ヶ月間でほぼ正常化していますね。炭水化物の量を10ヶ月間減らしていけば、それほど難しくなく適応できそうです。
「糖尿病における低炭水化物ケトン食の治療的役割」
田中博士 そうです。突然食事を変えるのが難しい方は時間に余裕を持って、ゆっくり変更されても構いません。それでは続いて三番目の論文である動物実験を見てみましょう。この論文のタイトルは『糖尿病における低炭水化物ケトン食の治療的役割[41]』です。
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